はじめに

人類生態学教室は,東京大学大学院医学系研究科国際保健学専攻の講座です. 国際保健学専攻には修士課程と博士課程があり, 東京大学出身者だけでなく国内外の数多くの学生が研究をおこなっています.

修士課程に入学するためには,毎年8月に実施される筆記試験(専門2科目)と 口述試験に合格する必要があります.また博士課程に進学するためには, 2月に実施される入学試験を受験する必要があります. 修士課程,博士課程ともに,入学後,皆さんが研究活動をスムーズにはじめられるように, 事前にスタッフによる直接面談をおこないます. 大学院への進学を考えているかたは,なるべく早い時期に研究室のスタッフに メールなどで問い合わせてください.

人類生態学教室では,大学院生を独立した研究者として扱います.したがって, 研究課題を一方的に与えることはありません.それぞれが自主的に研究テーマを 設定し取り組むプロセスにおいて,研究者として最も大切な能力が養われると考えるからです. スタッフの役割は,大学院生のたてた設問の科学的意味についての助言と, 研究の遂行にかかわるサポートです.

こうして研究者としての能力を身につけた大学院の卒業生は,全国の国立大学・私立大学・ 国立研究機関などで研究者として活躍しています.その専門分野は人類生態学の関心の幅広さを 反映して,環境科学,人類学,栄養学,社会医学,国際保健学など多岐にわたります. また,修士課程の修了者のなかではJICAなど国際保健の実践機関で働いているものもいます. これまでの研究室の同窓生は200名を超えました.

社会的必要性

現在,人類はさまざまな問題に直面しています.人類の人口規模は史上はじめて 地球の環境収容力に近づきつつあり,またグローバライゼーションによる食生活, 疾病環境の変容は,世界各地に暮らす人類の健康におおきな影響を及ぼしつつあります.

人類生態学は,そもそも基礎科学であり,かならずしも社会の問題解決に寄与することを 意図して発展してきた学問ではありません.しかしながら,人間と環境の関連性を自然科学と 人文社会学の両面から実証的なデータ収集によって明らかにする研究と, それをとおして形成されてきた学問的フレームワークは,今日の人類が直面する問題に 対応するうえでも大きな意味をもちつつあります.私たちの意図とは別として, 人類生態学の研究成果が国連機関などによる意志決定に活用されることも少なくありません.

大学院での生活

人類生態学は既存の枠組みのなかで自分に与えられたテーマをこなすだけでは成立しない学問分野です. なぜならば私たちをとりまく自然環境・社会環境は激変しており,そこに生きる人類の生態を明らかに するためには,オリジナリティーにあふれる研究への取り組みが不可欠だからです.

人類生態学を志す大学院生に,やる気と能力が必要なのはいうまでもないことですが, それに加えて私たちと研究分野を開拓していく幅広い関心をもつことを期待します

大学院生の研究課題は,人類生態学に関連したテーマであれば自由ですが, おおざっぱに分けると,フィールド調査を中心に研究をすすめる課題と, 実験を中心に研究をすすめる課題があります.

フィールド調査の対象は,各自が自主的に選択した地域を国内外に設定する場合と, 研究室のプロジェクトで対象としている地域を選ぶ場合があります. ちなみに平成18年度から3カ年計画で,環境省の地球環境研究費の助成による アジア・オセアニアの6カ国を対象にした大型プロジェクトが始動します. このプロジェクトの概要については,ホームページ上でも案内していきますので, 関心のあるかたはご覧ください.

実験のテーマは,周生期における化学物質の発達神経毒性など実験動物をつかうものと, 地域生態系の汚染物質とその健康影響など試料の測定を中心にするものがあります. たとえば,バングラデシュにおけるヒ素汚染,インドネシアにおける農薬汚染の研究は, フィールド調査と実験研究の両方をまたがる課題といえます.

詳しい研究課題を知りたい方は,「研究室の概要」のページと 「研究成果」のページをごらんください.

<連絡先> 
教授 : 渡辺 知保   chiho<at>humeco.m.u-tokyo.ac.jp
准教授 : 梅崎 昌裕  umezaki<at>humeco.m.u-tokyo.ac.jp

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